2種類の溶質を含む飽和溶液の計算|「2種類の溶質 飽和溶液 計算」の方法

先に結論:「飽和溶液 計算」では、2種類の溶質を含む場合も、まず温度に対応する溶解度から各溶質の飽和量を求めます。その後、水と2種類の溶質を合わせた質量を分母にして、各溶質の濃度と溶質合計の濃度を分けて計算します。単純に「溶解度の数字だけ」を足すのではなく、溶解度の分母が水100 gであることを確認するのが最初のポイントです。

1. 飽和溶液と溶解度の意味

飽和溶液とは、ある温度で溶媒に溶ける溶質が限界まで溶けた状態です。これ以上溶質を加えると、溶け残るか、条件によっては結晶として析出します。教科書や問題集で使う溶解度は、多くの場合「水100 gに溶ける溶質の質量(g)」で表されます。

例えば、20℃で物質Aの溶解度が36 gなら、水100 gにAを最大36 gまで溶かせる、という意味です。これは「溶液100 g中に36 gある」という意味ではありません。水100 gとA 36 gを合わせた溶液は136 gになるため、Aの質量パーセント濃度は36÷136×100=約26.5%です。

計算前にそろえる3つの情報

  • 温度:溶解度が変わるため、問題の温度を固定する。
  • 溶媒の質量:一般的な溶解度表では水の質量を使う。
  • 溶質ごとの溶解度:2種類ならAとBを別々に確認する。

2. 2種類の溶質の飽和溶液 計算を行う基本式

水の質量を mw(g)、物質AとBの溶解度をそれぞれ SA、SB(g/100 g水)とします。互いに反応せず、混合によって溶解度が変わらないという学校計算の仮定なら、次の順番で計算できます。

Aの飽和量 = SA × mw ÷ 100

Bの飽和量 = SB × mw ÷ 100

溶液の全質量 = 水の質量 + Aの質量 + Bの質量

Aの質量% = Aの質量 ÷ 溶液の全質量 × 100

溶質合計の質量パーセント濃度を求める場合は、分子をAとBの合計質量にします。一方、「Aの濃度」と聞かれた場合はAだけを分子にするため、同じ飽和溶液でも答えが変わります。問題文が「各溶質」なのか「溶質全体」なのかを読み分けてください。

水100 gに溶質A 36 gとB 31.6 gを溶かした例で、全質量167.6 gと各質量%濃度を分けて示す図
例題の数値を使い、溶解度から求めた量と、質量%濃度の分母となる溶液全体を対応させています。

3. 例題:水100 gに2種類を溶かす

例題:20℃の水100 gに、物質Aと物質Bをそれぞれ飽和するまで溶かします。Aの溶解度を36 g/100 g水、Bの溶解度を31.6 g/100 g水としたとき、各溶質の質量、溶液の全質量、各濃度と溶質合計の濃度を求めます。

項目AB計算
溶解度36 g31.6 g水100 gあたり
飽和量36 g31.6 g溶解度×100÷100
質量%約21.5%約18.9%各質量÷167.6×100

まず、Aは36 g、Bは31.6 gです。したがって溶液の全質量は、100+36+31.6=167.6 gになります。Aの質量パーセント濃度は36÷167.6×100=約21.5%、Bは31.6÷167.6×100=約18.9%です。

2種類の溶質を合計した濃度なら、分子は36+31.6=67.6 gです。67.6÷167.6×100=約40.3%となります。21.5%と18.9%を足しても約40.4%になりますが、途中計算では丸める前の値を使う方が誤差を小さくできます。

注意:この例は、AとBが互いの溶解度を変えないという理想化です。実際に2種類の電解質や有機物を混ぜる場合は、共存による塩析、錯形成、反応、活量の変化が起こることがあるため、純水中の溶解度をそのまま足せない場合があります。

4. 水の質量や溶液の質量を逆算する

水が100 g以外でも考え方は同じです。例えば水250 gなら、Aの飽和量は36×250÷100=90 g、Bは31.6×250÷100=79 gです。溶液全体は250+90+79=419 gになります。

反対に「溶液全体の質量」だけが与えられている場合は、先に水の質量を文字で置きます。水をx gとすると、理想化した2種類の飽和溶液の全質量は、

x + SAx÷100 + SBx÷100

です。ここからxを解けば、水、A、Bの順に戻せます。ただし、問題文が「水を蒸発させた後」「結晶をろ過した後」「溶液を薄めた後」のように操作を含む場合、同じ式をそのまま使うと誤ります。操作ごとに水の量、溶質の量、析出した結晶の量を表にしてください。

求めたい値分子に入れる量分母・基準
Aの質量%Aだけ水+A+Bの全質量
溶質合計の質量%A+B水+A+Bの全質量
溶解度溶けた溶質水100 gあたりに換算

加えた量が溶解度を超えるか確認する

問題で「Aを30 g、Bを40 g加えた」と与えられても、両方が全量溶けるとは限りません。水100 g、同じ温度、相互作用なしという条件で、Aの溶解度が36 g、Bが31.6 gなら、Aは30 gすべて溶けて未飽和、Bは31.6 gだけが溶けて8.4 gが固体で残ります。溶液の質量は水と実際に溶けた量だけで計算し、残った結晶を質量%の分母へ加えません。

溶けた質量 = 加えた質量と溶解度から求めた上限のうち、小さい方

この判定を先に行うと、飽和溶液の濃度を求める問題と、単に溶質を加えた後の濃度を求める問題を区別できます。温度や溶媒が途中で変わる場合は、その条件ごとに溶ける上限を計算し直してください。

溶液全体の質量から水量を逆算する例

Aの溶解度を36 g、Bを31.6 g(水100 gあたり)とし、溶液全体が335.2 gと分かっているなら、全質量は水量の1.676倍です。335.2 ÷ 1.676 = 200 gが水の質量、Aは72 g、Bは63.2 gとなります。最後に200 + 72 + 63.2 = 335.2 gと戻して確かめます。析出した固体を含む全試料の質量が与えられた場合は、溶液だけの質量と混同しないでください。

5. 温度変化と析出量の計算

溶解度は温度によって変わります。高温でAとBを飽和させてから冷却する問題では、まず高温で溶けていた量を求め、次に低温で溶けていられる量を求めます。その差が、理想化した条件での析出量です。

  1. 高温の溶解度から、AとBの初期溶解量を別々に計算する。
  2. 低温の溶解度から、冷却後に残れるAとBの量を別々に計算する。
  3. 「初期量−低温で残れる量」を各溶質について求める。
  4. 結晶として出てくる量を合計する。ただし同時析出や共結晶は別扱い。

計算例として、仮の溶解度を高温でA 52 g、B 39 g、20℃でA 36 g、B 31.6 g(いずれも水100 gあたり)とします。高温から20℃へ冷やすとAは52−36=16 g、Bは39−31.6=7.4 gが析出し、単純な独立析出の仮定では合計23.4 gです。この例は差分の手順を示すもので、特定物質の実測値ではありません。

高温と低温で水の質量が同じという条件も必要です。加熱中に水が蒸発した場合は低温時の水量を先に求め、その量に対応する溶解度を計算します。蒸発分を無視したまま溶解度だけを引き算すると、析出量を誤ります。

冷却後の溶解度が初期の溶解量より大きく、差が負になった場合は、負の析出量として扱いません。単純モデルでは析出なしとし、溶液は未飽和として整理します。析出物が水和物になる、または溶質同士が反応する場合は、固体の組成と混合系の平衡データを別に確認してください。

溶解度曲線から数値を読む場合は、目盛りの読み取り誤差にも注意します。グラフの線上の値を必要以上に細かく読まず、問題が指定する有効数字に合わせて答えを丸めます。

6. よくある間違いと、計算できない条件

間違い直し方
溶解度の分母を溶液100 gにする溶解度表が「水100 g基準」かを確認し、水の質量に比例計算する。
AとBの濃度を同じ分母で計算しない質量%濃度の分母は、A・B・水を合わせた最終溶液の質量に統一する。
溶解度を足せば必ず実験値になると思う混合で溶解度が変わらない仮定か、混合系の実測データがあるかを確認する。
温度と水和状態を無視する温度、無水物・水和物、純度、溶媒の種類を問題条件から拾う。

次のような条件では、純水中の溶解度を2つ足すだけでは解けません。溶質同士が反応する、片方がpHを変えてもう片方の溶解度を変える、共通イオン効果が強い、溶媒が水以外、温度が一定でない、あるいは析出物が水和物や複塩になる場合です。そのときは混合系の溶解度データ、平衡定数、実測値などが必要です。

7. 飽和溶液計算のよくある質問

学校問題で、互いに反応せず溶解度が変わらないと明示または想定される場合は、各溶質の飽和量を別々に求めて合計できます。実際の混合溶液では相互作用を確認してください。

同じではありません。溶解度は水100 gあたりの溶質量、質量%濃度は溶液全体に対する溶質の割合です。例えば36 gの溶質が水100 gに溶けた場合、質量%は36÷136×100です。

各溶質の濃度は、それぞれの質量を分子にします。合計濃度はAとBの質量を足した値を分子にします。分母はどちらも最終的な溶液全体の質量です。

同じとは限りません。各温度の溶解度変化が違うため、初期量から低温で残れる量を溶質ごとに引きます。共結晶や相互作用がある場合は、単純差分では扱えません。

参考資料

IUPAC Gold Bookの用語定義や、使用する物質の安全データシート・実験手順書も確認してください。この記事の数値例は計算手順を示すための例であり、特定の混合系の実測溶解度を保証するものではありません。

まとめ

2種類の溶質を含む飽和溶液計算では、温度と水の質量を固定し、AとBの溶解度から飽和量を別々に求めます。次に水・A・Bの合計を溶液の全質量とし、各溶質の濃度と合計濃度を目的に応じて計算します。

  • 溶解度の基準は、多くの場合「水100 gあたり」である。
  • 2種類の溶質は、まず別々に飽和量を計算する。
  • 質量%濃度の分母は、最終的な溶液全体の質量にする。
  • 混合で溶解度が変わる系は、単純加算せず追加データを確認する。

基本的な濃度の換算は質量パーセント濃度計算、調製量や秤量値を求める問題は溶液調製計算の実践ガイド、モル単位が必要な場合はモル濃度計算と併用すると、問題文の単位を整理しやすくなります。

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著者: Masa

化学研究者・教育者

溶液計算を、式の意味、単位、実験操作の順番まで再確認できる形に整理しています。